逆らえない恋人 1

スバルくんを見て、彼の年齢を正確に当てるのは、たぶん難しい。
俺がそうであったように。
初めてスバルくんを見た俺は、彼はてっきり同い年か、それよりも少し上くらいだろうと思ったけれど、きれいに予想を裏切って彼はまだ高校生だった。
それから2年。
スバルくんは大学生になって、俺は順調に年齢を重ね、26歳になった。
童顔だと言われる俺と大人っぽいスバルくんが並ぶと、誰がどう見てもスバルくんのほうを年上だと思うだろう。

待ち合わせは駅前のロータリー。
花壇のふちに腰掛けて、俺はぼんやりと駅前を行きかう人を眺める。
軽やかな色のスカートを翻して歩く女の子たちの向こうから、頭一つ突き抜けた長身が俺の方へとまっすぐに向かってくる姿が見えた。明るい色の髪の毛先が揺れて、スバルくんの顔を縁取っている。
「……いい男だなあ」
ついそんなつぶやきがもれてしまった。
出会ってから2年、彼を見るたびにいつもそう思うんだけど。
やっぱり今日も、スバルくんは遠目に見たってやっぱりいい男だった。

「陽史さん、やっぱりその色合ってる」
向かい合って座るオープンカフェのテラスで、スバルくんは俺を見てにっこりと笑った。
俺が今日来ているトップスのシャツはスバルくんがプレゼントしてくれたもので、インポートブランドのけっこういいお値段がする一品だ。
「そうかな……ありがとう」
照れて何となく首筋に触れると、そこには半年ほど前にスバルくんに贈られたシルバーチェーンのネックレスがぶら下がっている。広いテーブルの下、スバルくんの足が俺の足に触れた。ぶつかったのではなくて、わざとだ。
すり、とスバルくんが足を動かして俺のすねをこすりつける。
「……っ」
テーブル越しにスバルくんを見ると、彼はコーヒーカップを片手に持って静かに微笑んでいた。そうしながらも、俺から目をそらさない。
そのままで、足を数回擦り付け、足同士が触れ合う位置で動きを止めた。
「ねえ陽史さん、俺、見たいDVDがあるんだけど、そこで借りて、俺の家、行きません?」
カフェの通りを挟んで向こう側はレンタルショップだ。
触れ合ったままの足、ズボンの布越しにスバルくんの体温を感じながら、俺はこくりとうなずいた。
俺はスバルくんのどんな提案も絶対に断らないし、スバルくんもそれを知っている。
「決まり」
にこっとスバルくんが笑って、カップに残っていたコーヒーを飲み干した。
俺もスバルくんに倣うように、カップを口につけて少し冷めた液体を口の中に送り込んだ。

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