fortune kiss 18

 控え室を出たところで、レオトの美しい立ち姿を見つけた。後ろから声をかけると振り向き、にこりと笑う。
「ちょっと、いい?」
 教会の中庭に誘い出すと、レオトは黙って後をついてきた。中庭にはひと気は無く、真上からさんさんと春の日差しが降り注いでいた。
 諒は胸の花を意識しながら大きく息を吸う。
 レオトの前に立ち、真っ直ぐに彼を見つめた。
「レオト、キスして」
 あれ程諒を悩ませた想いはあっさりと音声に姿を変え、レオトに届く。レオトは穏やかに細めていた瞳を見開き、諒を凝視した。
「何、言って……。俺に、触られるのは嫌なんじゃなかったの……?」
 冷静を保とうとしているレオトの瞳が揺れ、声が震えていた。
 そんなレオトの姿に諒は胸が締め付けられ、足元に視線を落とした。いつも優しく大らかなレオトを苦しめていた自分の態度に歯噛みしたい思いだった。
 ごめんね……
 心の中で呟くのと同時に、諒の腕はレオトの首へと伸びた。そのまま引き寄せ、自分からくちびるを合わせる。
 慣れ親しんだ感触を得るのと同時に、レオトの香りに包まれた。
 瞳を閉じ、感じる全てを刻み込もうとした。
 レオトがここにいるという証。触れ合う温もり。
 今、自分が求めている大切なもの……。これからも、そばにいてほしいもの。
 ゆっくりとくちびるを離すと、レオトが茫然と呟く。
「……なんで……」
 焦点を失った淡い茶の瞳を見つめて、諒は想いを言葉にする為に口を開いた。
 欲しいものは欲しいと言わなければ手に入らない。レオトがかつて教えてくれた事だ。自分はいつも与えられるのを待つばかりで、自分から手に入れようとしなかった。こんな事では幸せになれるはずがない。美和の言う通りだ。
「レオトが、好きだよ」
 諒の告げる真実に、レオトの瞳が色あいを取り戻す。
「レオトのキスを……拒否したのは、自分の気持ちに気づいて、戸惑っていたから。あの後すごく後悔した。散々レオトを振り回して今更って思われるかもしれない。嫌な奴になっても構わない。それでも俺は、レオトが欲しいんだ」
 レオトは何度か息を継ぐと、切なげに瞳を細めて諒を見つめた。
「……本当に?」
 レオトのベルベットのような声が掠れる。
「本当に。俺は、レオトが好き……レオトが欲しい」
 諒の言葉が終わらないうちに、その体はレオトの腕の中に抱きこまれていた。かつてない荒々しいキスを受けながら、諒も両腕でレオトの背中をしっかりと抱く。
 労わりでも、慰めでも、祈りのキスでもない。
 溢れる気持ちを、そのまま伝えるためのキス。
 それは安らぎだけではない。諒は体の中に炎が点るのを感じ、喜びに震えた。
 もう、離さない。
 キスの合間に紡いだ言葉は、互いのの微笑みと共にまたキスになって甘く溶けた。

Fin

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