東京タワーへ行こう 2

しかし、仕事が思いのほか、忙しかった。
火曜に新しいプロジェクトが始動する事が急遽決定し、その企画を手伝う事になったのが
主だった原因だった。
毎晩残業したが、仕事は終わらずせっかく哲平が来ているというのに朝食以外の食事を一緒
にとることも、ゆっくり会話する事も出来なかった。
買い込んだ食材が冷蔵庫で腐るのも嫌なので、なんでも適当に料理してかまわない、と哲平
に告げると「一緒に食うんじゃないのかよ」と不満げな表情を見せた。
出来ればそうしたいのだが、とてもそんな余裕が無い。
申し訳ない気持ちと、ちょっとの失望が混じった複雑な気分で哲平に謝った。

「ヤス、まだ寝ないの?」
声を掛けられて、気づくと哲平が眼をこすりながらぼんやりとした表情で立っていた。
時計を見ると午前3時半を指している。
仕事に夢中になっているうちにまた夜更かししてしまった。
とにかく、東京タワーには連れて行かなくてはいけない。
週末に仕事を持ち越さないため、家でいつ終わるとも知れない残業を片付けていた。
「あぁ、そろそろ寝るよ」
バックアップを取り、パソコンを終了させながら、睡眠時間の短い日が続いている事に
気付いた。だから、こんなに目がしょぼしょぼするのか。
目薬を差し、頭の中で計算する。今週の睡眠時間は平均四時間くらいだ。
どうりで体の動きも鈍くなるはずだ。
しかし、仕事に熱中していて気が張っているためか、あまり疲れたという感覚は無い。
首を回し、凝った筋肉をほぐす。
「そんなに仕事、大変か?」
すっかり眼が覚めた様子の哲平は心配そうに問う。
「新しい企画立ち上げているからな。でも、まぁこれもじきに一段落つくし。そしたら
かなり楽になる。それより、起こして悪かったな。うるさかったか?」
パソコンで資料を作っていただけだからそんな筈はないと思いながらも一応聞くと、哲平
は首を左右に振って否定した。
「ノドが乾いたから。でも、すっかり眠気は覚めちゃったな。ヤス、まだ風呂入ってない
んだろ?入って来いよ。腹へっているか?夜食作ろうか?」
優しい言葉をかけてくれることに感激した。
最近、こういう人間らしい会話をしていなかったから、心に染みた。
「ありがとう、でも、もう寝るだけだから大丈夫だよ。寝る前に、少し酒飲むけど、付き
合うか?」
すると哲平は嬉しそうに笑った。
「あぁ。じゃあ、俺が用意しておくから」
「頼んだ。俺、風呂入ってくる」
哲平はにこりと笑って頷いた。

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