秘密

始業90分前。
いつものように会社に一番乗りをした。
コーヒーを淹れ、朝礼までの間新聞を読む。
ここ一年ほどのあいだについた習慣。
コーヒーを用意し、新聞を広げたところで、いつも遅刻ギリギリの彼が珍しく早く来た。
早すぎるくらいだ。
「おはよう!」
ドアの所から元気に声をかけ、鞄を放り出してこっちへ来る。
そして、淹れたてのコーヒーを断りも無く、一口。
「……おはよう」
少々驚きながら挨拶を返すと、日に焼けた顔をほころばせ、ポケットから白いものを取り出した。
「これ、お土産。沖縄に行ってたんだ、海に潜りに」
手のひらに載せてくれたのは、白い貝殻。
「あぁ、だから金曜休みだったんだ。連休にしてたんだね」
金曜の有給の訳を知り、納得する。
彼は、秘密めいた視線をよこした。
「他の奴らには、この土産無いから。見つからないようにしまっておいて」
え?
「今度は一緒に行こう。とっておきのスポットみつけたからさ」
……なるほど。
オフィスラブもいいかもね。
朝の光でいっそう白く光る貝を眺めて、頷いた。

Fin