しようよ。 3

 りっちゃん、りっちゃん、りっちゃん。

 授業の予習をして、お風呂に入って、歯を磨いて。
 ベッドに入るけど、どうしても眠れない。
 頭の中はりっちゃんでいっぱいだ。

 時計を見た。
 針はちょうど深夜零時。
 僕はそっとベッドを抜け出し、靴を履いて静かにドアを開ける。

 隣の家のりっちゃんの部屋からは、カーテンの隙間から灯りが漏れていた。柵越しに窓ガラスを軽く指でトントンすると、すぐにカーテンが開いて窓が少し開いた。中からりっちゃんが顔を出す。
 僕が眠れない夜にりっちゃんのところに来るのも昔からだから、りっちゃんは何も言わずに僕に向かってうなずいてくれて、すぐに窓を閉め、カーテンを元通りにしてから玄関を開けてくれた。
 僕は静かにりっちゃんの家に滑り込んで、りっちゃんに続いてりっちゃんの自室に入る。
 りっちゃんのデスクの上にはノートパソコンだけが開いていて、どこか外国の文字ばかりのサイトを見ていたようだった。
「先にベッドに入ってて」
 りっちゃんは優しい声で言って、開いていた画面を閉じ、パソコンを落とす。りっちゃんのベッドに爪先からもぐりこんで僕は壁際に寄った。りっちゃんの匂いがする枕の端っこに頭を乗せ、デスクの上を片付けるりっちゃんの後ろ姿を見守る。
 お風呂上りのりっちゃんは、濃いグレーのコットンのパジャマに身を包んでいた。濃いこげ茶色の髪はまだ少し水分を含んでいるかのように天井から落ちる照明の光をはじく。
 後姿でもこんなにかっこよくて、僕はりっちゃんのベッドの中でりっちゃんの匂いに包まれながらものすごくドキドキしていた。
 やがて小さな間接照明だけを残して部屋の灯りを消したりっちゃんが薄い上掛けをめくり僕の隣に入ってくると、僕は条件反射みたいにりっちゃんの胸元にすり寄って、温かいりっちゃんの体温を感じながらりっちゃんの匂いを胸いっぱいに吸い込んだ。
 とたんに緊張がほどけて、身体の力が抜けていく。
 りっちゃんはベッドの中で僕の身体に両腕を回し、軽く抱きしめてくれた。
「甘えん坊」
 耳元でささやく声はとても優しくて、僕は「うん」とりっちゃんのパジャマのボタンに唇を触れさせたままで答える。
「りっちゃんと一緒にいたかったから」
 正直にそう答えると、僕の頭の上でりっちゃんが少し笑ったのが分かった。
「本当に可愛い。悠貴。身体だけ、大きくなったのに、全然変わらない」
 りっちゃんが僕の大きさを確かめるように背中を撫でる。その手が腰のほうへ滑り降り、ウェストのあたりに触れたとき、僕は「ん」と思わず鼻からくぐもった声を出して僅かに身を逸らせた。
 そこ、弱い。
 くすぐったいような何とも言えない感覚がじんわりと生まれて、僕はつい下半身をりっちゃんに押し付けるようにしてしまった。
 わずかに熱を孕み、硬さを持った僕の分身がりっちゃんの太ももに当たる。
 普通だったら、恥ずかしいのかもしれない。でも、僕はりっちゃん相手だったら全然平気だ。りっちゃんだって、たぶん、分かっててやってる。
 僕を煽るために。
 りっちゃんの手がパジャマの上着の裾から滑り込んでいて、肌に直接触れる。背中を撫でる手の感触が気持ちよくて、僕は長い溜息を洩らした。
「りっちゃん、大好き」
 りっちゃんに囁くと、りっちゃんは目元にキスをしてくれた。
「可愛い、悠貴」
 僕の背中を撫で、肩甲骨のラインをたどるように指先が線を描く。
 僕はたまらずにりっちゃんの胸元にしがみついた。
「んん」
「気持ちいいの?」
 囁き声で僕に問いかけるりっちゃんの声が、少しだけ笑う空気を含んでいる。
「……うん。りっちゃんに触られるの、好き」
 僕はいつだってりっちゃんにすべてを明け渡している。
 りっちゃんが僕にすることなら、僕はなんだって受け入れる。
 りっちゃんがしばらくのあいだ僕の背中を撫でているうちに、僕はどんどん煽られて、前がすっかり張りつめてしまった。リっちゃんの手が今度は下へ滑り降り、パジャマのズボンと下着のゴムの隙間に手を差し入れる。りっちゃんの乾いた手のひらが僕のお尻を撫で、僕は甘い吐息を漏らした。
「今日は、どうする? 悠貴、どうしたい?」
 りっちゃんが優しい声で問いかける。
 選択肢はみっつ。
 りっちゃんに胸をいじってもらって、僕が自分で自分のを扱くか、りっちゃんにお尻の穴をいじってもらいながら自分でするか、りっちゃんに直接手で僕のを扱いてもらうか。
 どれも大好きで、気持ちよくて、本当は全部してほしい。
 迷いながら、僕はりっちゃんの胸元から顔を上げて、りっちゃんを見上げる。
 小さな間接照明だけが残された部屋の僅かな灯りの中で、リっちゃんと目が合った。
「ぼく、りっちゃんとしたい」
 手でしてもらうだけじゃなくて。
 りっちゃんが「気持ちいい」と教えてくれたそこに、りっちゃんのを迎え入れたい。
 りっちゃんとつながって、一つになって、りっちゃんと一緒に気持ちよくなりたい。
 断られるのは分かってたけど、でも言わずにはいられない。
 僕はお兄ちゃんと違って、自分の感情は正直に言うタイプだから。
 僕の答えがわかっていたりっちゃんは、僕をなだめるように額にキスを落とした。
「それはだめだよ。俺は悠貴を気持ちよくさせてあげたいだけ。セックスはしない」
「………じゃあ、りっちゃんのを、僕が手でしたい」
 僕は譲歩して、違う案を出した。
 でもやっぱりりっちゃんはうんとは言わなかった。
「そうしたら、これはどうするの?」
 りっちゃんが太ももをぐっと僕の分身に押し付ける。布越しに擦れて、甘い切ない刺激に僕はつい小さな声を漏らした。
「……僕のは、後ででいいから。僕もりっちゃんのに触りたい」
「だーめ」
 りっちゃんは甘く答えて、触れたままになっていたお尻の肉をむにむにと揉んだ。
「それはダメだよ、悠貴。……悠貴、ここ、好きでしょう。今日はここをしてあげようか」
 りっちゃんの指先が僕のお尻の穴に触れ、軽くそこをなぞった。それだけで僕の身体に電流が流れたみたいになる。僕はりっちゃんの言うがままに首を縦に振ってりっちゃんの胸元に頭を押し付けた。
「いい子。いい子だね、悠貴」
 りっちゃんはとびきり優しい声で囁くと、動く気配がした。手を伸ばして枕元の引き出しから軟膏を取り出し、それを指に掬って僕の後ろに塗り付ける。

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